対応疾患

アトピー性皮膚炎

治療が飛躍的に進歩した疾患の一つです。
表皮バリア異常、免疫異常、痒みが組み合わさり湿疹を繰り返す疾患です。

分子標的薬等新薬が次々と開発され今まで通常の治療では改善しなかった患者さんも改善するようになってきました。但し今でも治療の基本は外用剤による治療です。6か月しっかり外用しても改善しない患者さんは分子標的薬による治療が可能になります。デュピクセントは生後6か月の乳児から使用することが可能になりました(注射製剤)

〇分子標的薬
デュピクセント:2週に1回の注射で多くの患者さんが症状が3分の1程度になり3割の患者さんは症状が1割以下になります。
〇JAK阻害剤
リンヴォックサイバインコオルミエント:内服薬です。
デュピクセントと同等かそれ以上の効果がありますが副作用がデュピクセントよりやや多いためデュピクセントで不十分な患者さんに用いられることが多い薬剤です。
デュピクセントは導入前の検査が不要で当院でも行っていますがJAK阻害剤は導入前の検査が必要なため当院では行っておらず総合病院を紹介しております。
〇通常の治療
湿疹の状態に応じたステロイド外用薬の概要が基本ですが軽症の時はステロイドを含まない外用薬も開発され使用できます。
外用はプロアクティブ療法と言い湿疹が表面的に治ってもすぐにやめず目に見えない炎症が完全に消退するまで外用を減らしながら続けることが重要です。

【ステロイドを含まない外用剤】
  • コレクチム軟膏:6か月以上の乳児から使用できます。
    刺激が少なく使い易いですが1回に使用できる量に制限があります。
  • モイゼルト軟膏:3か月以上の乳児から使用できます。
    刺激も少なく1回に使用する量にも制限がないので使い易い外用剤です。
  • プロトピック軟膏:発売されてから10年以上たちます。
    2歳から使用できます。効果は前2剤と同等かそれ以上ですが刺激がやや強い事と1回で使用できる量に制限があります。

この3剤以外に今後も新薬が発売になる予定です。

尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん)

分子標的薬(生物学的製剤)の登場により大きく治療が変わりました。
今では皮疹が全てなくなる患者さんも稀ではありません。
高額医療になりますので重症、中等症の方が対象となります。

事前検査が必要なため当院ではまだ行っておらず総合病院を紹介しています。

近年乾癬は皮膚のみの病気ではなく全身の炎症性疾患と考えられており高血圧、高脂血症、心血管系の疾患を合併する患者さんも多いため健診なども必要です。そのため関節炎を伴っていたり重症の患者さんは生物学的製剤の使用も考慮した方が良いと思います。

〇当院での治療
軽症な患者さんはビタミンD3外用剤、ステロイド外用剤を外用し治りにくい部位はナローバンドUVB,エキシマライトの照射も併用します。
中等症の患者さんは外用、光線療法に加えてオテズラ(PDE4阻害剤)という内服薬を併用すると有効です。
特に頭、手、爪に病変が目立つ患者さんはオテズラの内服が勧められます。

蕁麻疹(じんましん)

痒みを伴う膨疹(みみず腫れや虫刺されの様に見える)が急に出現し多くは数時間、長くても24時間以内に消退しますが繰り返し出現する疾患です。

食物が原因と考えている患者さんが多いですが、食物が原因になる蕁麻疹は全体の5%未満です。感染症(細菌、ウイルス)、疲れ、ストレス等様々なことが関与し特定することが難しい事が多い疾患です。

当院では食物による蕁麻疹の可能性が高いときはアレルギー検査を行います。
最近は花粉症と関連する食物アレルギーも増えてきています。
汗、寒冷、日光等が関連するときは生活指導も行います。

治療は抗アレルギー剤を基本とし漢方薬、H2ブロッカー、抗ロイコトリエン薬等を併用しますが、経口剤で不十分の重症の蕁麻疹の場合はゾレアという月に1度の注射薬を併用する治療がありその際は総合病を紹介いたします。
最近アトピー性皮膚炎、痒疹に適応があるデュピクセントが蕁麻疹にも効果があり適応になりました。

円形脱毛症

様々な原因で毛を作り出す毛根部をリンパ球が攻撃し毛が抜けるという自己免疫が原因と考えられています。

脱毛があっても円形脱毛症ではない事もあるためダーモスコープで確認してから治療を始めます。
初期から中期では炎症が関与しますのでステロイド外用剤が有効です。
抗アレルギー剤、漢方薬、セファランチンの内服を併用することもあります。

最近では自己免疫反応を抑える紫外線療法(エキシマ、ナローバンドUVB)が有効で副作用もほとんど心配ないため併用することが多くなっています。

通常の治療を続けても効果が見られない場合はステロイドの局注、局所免疫療法(SADBEの外用)を行うこともあります。

以上の治療で改善しないときはJAK阻害剤という内服で治療する免疫調整剤があり現在はオルミエント、リットフーロという薬剤があります。

全身的な副作用が生じることがあり内服前の検査(胸部レントゲン、血液検査等)等があるため現在は当院では総合病院を紹介しています。時期を見て当院でも内服できるようにしたいと考えています。
当院では通常の外用、内服、紫外線療法(エキシマ)に加え難治性の時はステロイド局注、局所免疫療法(SADBEの外用)を行っています。

ニキビ(アクネ)

思春期を中心に多くの人が経験する疾患です。

ニキビの第1の原因は毛穴がつまることです。思春期になりホルモンの働きて皮脂が増え毛穴が詰まる事、思春期以外では化粧品等で毛穴がつまる事が原因になります。
さらに詰まった毛穴に皮脂がたまりアクネ菌により炎症が起き赤いニキビや化膿したニキビになります。

治療の基本は毛穴のつまりを取る事です。現在毛穴のつまりを取る薬剤は過酸化ベンゾイルとビタミンA製剤の2種類があります。
思春期のニキビはホルモンの影響ですので思春期が過ぎるまで継続する必要があります。
化粧品は毛穴に詰まらないようにファンデーションはクリームタイプを避けてパウダータイプを選ぶようにして下さい。毛穴が詰まりにくいノンコメドジェニックと表示されてある化粧品も有効です。
内服では炎症、皮脂分泌を抑制するために抗生剤に加えて漢方薬も使用します。

治療は毛穴の詰まりを取る事と炎症を抑える薬剤、手技になります。
当院では薬剤に加えAC Dualという光線療法を行っています。

〇毛穴の詰まりを取る薬剤
  • 過酸化ベンゾイル:デュアック、ベピオ、エビデュオ
  • ビタミンA製剤:ディフェリン(アダパレン)、エビデュオ
〇炎症を取る薬剤
  • 過酸化ベンゾイル:デュアック、ベピオ、エビデュオ
  • 抗生剤:ダラシン(クリンダマイシン)、アクアチム、ゼビアックス
〇漢方薬
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)、荆芥連翹湯(けいがいれんぎょうとう)、排膿散乃湯(はいのうさんきゅうとう)、桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
〇AC Dual
光線療法です。アクネ菌への殺菌効果と抗炎症作用をもつ2種類の波長有しており1~2週に1回の照射で効果がみられます。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

手、足に黄色い膿がたまった膿疱が特徴でその他赤い丘疹、紅斑を生じる疾患です。

原因として喫煙、虫歯、歯周炎(歯槽膿漏)が多いため、禁煙、定期的な歯のチェックが必要です。
数は少ないですが金属アレルギーが関連することもありますので、煙草を吸わず歯の疾患もない人は金属パッチテストを行うこともあります。
10%~30%に関節痛(特に前胸部)を伴うことがあります。

〇治療
症状が強い時はステロイド軟膏、ビタミンD3軟膏を用いますが、軽度の時は保湿剤のみで良いこともあります。紫外線療法も有効で当院ではエキシマライト(セラビーム)を照射しています。

内服薬はビオチン散、痒みがある時は抗アレルギー剤を使用します。
また保険は適用になっていませんが乾癬に有効なオテズラという抗炎症剤も数年後には使用できるようになるかと思います。

重症な患者さんには分子標的薬(生物製剤)の注射も有効です。

この疾患の患者さんは禁煙、歯のチェックが大事です。

巻き爪、陷入爪(かんにゅうそう)

巻き爪と陥入爪は別の疾患です。

巻き爪は字の如く丸まった爪で、陷入爪は平らであっても爪の側縁が皮膚に食い込んでいる状態です。
両者が混ざっていることもあります。
巻き爪は丸まっているために痛みがでますので靴の調整とともに爪の矯正が必要です。

陷入爪は深爪と靴の間違った履き方、選び方が原因です。
爪は下図のように、スクエアオフに切り、深爪、バイアス切りにしないようにして下さい。

長さは趾先と同じくらいにして下さい。伸ばし過ぎも痛みの原因になります。

靴は足の形に合った靴を選び、一番大事なのは、足趾が自由に動くことです。そのためには靴紐をしっかり締めて靴の中で足が前に滑らないようにすることです。脱ぐときに靴紐をゆるめないと脱げないくらいでないと締めた事になりません。足が前に滑りにくいインソールや靴を脱ぎやすいチャック付きの紐靴もお勧めです。

巻き爪は靴の調整以外に矯正が必要なこともありネイルクリップ、ネイルエイド、巻き爪マイスター等を使います

尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい:イボ)

イボウイルスの感染によるものです。

イボウイルスは表皮の基底細胞(表皮の1番下)にも存在するため強めに治療しないと効果がありません。治療後に痂皮(カサブタ)ができる事が目安です。
液体窒素による凍結療法が基本ですが当院では難治性の時や小児で強く治療できない時はモノクロロ酢酸の外用、ビタミンD3の外用、ロングバルスYAGレーザー(主に成人)等も併用します。

シミ、ホクロ

シミの様に見えるものには日光色素斑、肝斑、雀卵斑、後天性真皮メラノサイトーシス、脂漏性角化症の初期等がありAging Complex Pimentation(加齢性複合性色素沈着症)と言い多くの人は複数のシミを合併しています。

〇シミ
シミにはQスイッチルビーレーザー、アイコン(IPL)で治療します。
数個の目立つシミはQスイッチルビーレーザー、数が多く小さなシミはアイコン(IPL)が適応になります。Qスイッチルビーレーザーは効果が良いですがシミが取れた後に炎症後色素沈着症(PIH)という色素沈着が数カ月続くことがあります。
〇肝斑(かんぱん)
肝斑がある時はレーザー、アイコンは行わず内服やハイドロキノン等の治療が優先されます。
〇ホクロ
ホクロで(当院での取り扱いは小さいホクロのみ)は主に炭酸ガスレーザーを用いますが数が多い場合等は短パルスのルビーレーザーを用いる事もあります。
深くまで焼灼するため小さな陥凹が残る可能性があることや手術ではないため再発することもあるということを注意して下さい。
〇脂漏性角化症
脂漏性角化症には主に炭酸ガスレーザー(Core2RE)を用います。

肝斑、脂漏性角化症は保険適応となりますが、それ以外のシミ、ホクロは保険外になります。

※ホクロは3mmの小さいもののみ治療しております。
それ以外のホクロは形成外科に紹介しております。

AGA(男性型脱毛)

フィナステリド(プロペシア)デュタステリド(ザガーロ)を扱っています。
世界の標準はフィナステリドでデュタステリドがAGAの治療薬として販売されているのは日本と韓国だけです。
フィナステリドで始めて6ヶ月で効果が見られない時にはデュタステリドを試してみると思います。